「南さん、やっと元気になってきましね…… 安心しました……」


 篠田さんが、隣のデスクでほほ笑んでいる。


「ご心配おかけしました」

 私は深々と頭を下げた。



「南さん、ちょと、いいかい?」

 声を掛けてきたのは、珍しく総務部長だった。


「はい、なんでしょう?」


「実は、来月の祝賀パーティーの、営業担当の案内役を頼みたいんだが……」


「ええっ。私が、ですか?」


「君なら大丈夫と、上からも言われているから……」


「そ、そんな無理ですよ……」


「それから、当日の案内役の女性は和装って事だからよろしく!」


「そ、そんな、私持ってませんよ」


「ああ、大丈夫。全部こっちで用意するから」



 総務部長は手を振って行ってしまった。


 部長と篠田さんがニヤニヤしていた事など、目にも入らなかった。