風は、木々の葉をむしり取りながら、ボーボーという轟音とともに、凄まじいスピードで森全体を駆け抜け、震わせていく
風が通り過ぎた跡には、むしり取られた葉や枝がそこかしこに散乱し、中には根っこもろともなぎ倒された若木もあった
だが、風の恐ろしさはここで留まらなかった
動物たちは、ふたたび巣にこもった
鳥たちは一斉にはるか上空へと飛び上がり、ある者は不安げに巣のあったであろう木の上を旋回し続け、ある者は早々に次なる目的地への旅路を行き始めた
風が山向こう運んできたものは、雲や、花粉、木々の香り、それだけではなかった
この風は、邪悪な血の匂いまでをも、連れてきてしまったのだ



