小学校の卒業式が終わり、月花は家に帰ってきた。しかしドアの前でふと、朝鍵を家に置いてきたことに気付いた。
「お兄ちゃん、まだ帰ってないかな~」
月花は4つ年が離れた兄、響也と2人暮らしをしている。つまり、家のなかに響也がいるのなら鍵を開けてもらえる。のだが、高校に通っている響也はまだ帰っていない可能性が高い。期待もせずにチャイムを鳴らした。すると
「あ、開いてる…」
鍵が開いている。月花の方が響也より早く家を出たから鍵を開けっ放しにしたのは響也だろう。なんとも無防備な兄だ。と月花は思った。
「ただいま~」
月花は家に1人だと思っていたが、違った。
「月花!?」
「あれ?お兄ちゃん、どしたの?」
響也が先に家に帰っていた。しかもなんだか部屋がカラフルに飾り付けられている。
「サプライズしようとしたんだけどな…。まあ、バレたら仕方ない!月花、happybirthday!」
そう、今日は月花の学校の卒業式であったと同時に月花の誕生日でもあったのだ。イケメン高校生ながらにサプライズをするという響也を、月花は我が兄ながらに可愛いと感じた。
「お兄ちゃん…。ありがとう!」
月花は響也に飛び付いた。響也もまんざらでもなさそうな顔をしている。しかし、響也は月花にあることを告げる。
「…月花。1つ頼みがある。…歌を、つくってくれ。」