一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい

「すみません、なんでもないです」

「……そう?」

南さんとは絶対ソリが合わなくて、好きになんてなるはずないって思っていたのにな。


たった一日一緒に過ごしただけで、少しばかり気持ちを揺さぶられてしまっている。それほど彼との時間は楽しくて、心地よいものだったから。


その後もなにかと車を運転する南さんの横顔をチラチラと見ては、胸を高鳴らせてしまう。


運転中も「眠かったら寝ててもいいからね」と気遣ってくれたり。

そんなこと言われちゃったら、ますます意識してしまうじゃない。

私を気に入ってくれたのは、ただ単に亡くなった愛犬と似ていたからなのに、勘違いしてしまいそうになる。


もしかしたら、今日一日一緒に過ごしていく中で、私の気持ちが少し揺らいだように、彼の気持ちにも変化があったのかもしれないって。


考えれば考えるほど胸は高鳴るばかり。

時間は過ぎていき、あっという間に自宅がある製作所敷地内の駐車場に辿り着いた。

時刻は十八時過ぎ。辺りは薄暗い。