一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい

「うわぁ、可愛い」

「ちょうど笹を食べているところでよかったね」

「はい!」


上野動物園には子供の頃何度か訪れたことがあったけれど、お母さんが亡くなってからは一度も訪れていなかった。

だから私も久し振りにパンダを見て、テンションが上がってしまう。


可愛いパンダに癒され、そこからは多少はドキドキしてしまっていたけれど、動物園を楽しむことができた。

「けっこう園内広いね。さすがに疲れた」

「はい……」

ベンチに腰掛け、お互い疲れた顔を見せ合ってしまう。


人も多く、なかなか人気の動物を見るのには苦労したけれど、見るたびに南さんと「可愛いですね」とか、意外な動きを見せると笑い合ったり。


会うのは三回目だけれど、初めて彼と普通に話せたかもしれない。

「だいたい見て回ったし、そろそろ次の場所に行こうと思うんだけど、いいかな?」

腕時計で時間を確認する南さん。

つられるように私も園内にある時計を見ると、時刻はお昼を迎えようとしていた。