一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい

ゆっくりながらも彼の目の前まで来ると、南さんは私をまじまじと見た後、にっこり微笑んだ。

「今日のミャー、すごく可愛いね」

「……っ! それはっ……!! ありがとうございます」


慣れない褒め言葉にたじろぎながらもお礼を言うと、南さんは可笑しそうにクスクス笑いながらも、助手席のドアを開けてくれた。

「どうぞ」

「すみません」

スマートな振る舞いに、最初からドキドキしてしまう。

こんな風に異性に車のドアを開けてもらったことなんて、一度もなかったから。


私が乗り込んだのを確認するとドアを閉め、南さんも運転席に乗り込むとすぐにエンジンをかけた。

「じゃあ出発するね」

「はい、よろしくお願いします」

シートベルトを締めると、南さんは車を発進させた。


今日は朝から雲ひとつない快晴。絶好のお出かけ日和だと思う。そんな日に南さんはどこへ行くつもりなのだろうか。


行き先は聞いていなかったから、どこへ行っても大丈夫なように膝下のスカートやヒールがないミュールを選んだわけだけど……。まさか大自然の中でアスレチックとか言わないよね?