一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい

「じゃあ行ってきます」

「健闘を祈る」


まるで戦に行くかのような送り出しを受け、小走りで敷地内にある駐車場へ向かうと、そこには見慣れない黒のワンボックスカーが停まっていた。


たぶんあれが南さんの車だよね?

勝手な想像だったけれど、御曹司が乗る車イコール高級車だと思い込んでいたから、足が止まってしまった。

けれど休日のこの時間にうちの会社を訪れる人はまずいない。ってことは、南さんで間違いないんだよね?

様子を窺っていると、私に気づいたようで南さんが運転席から降りてきた。


「おはよう、ミャー」

「あ……おはようございます」

ワンテンポ遅れて挨拶を返し、慌てて駆け寄っていく。

けれど助手席のドアの方へ来てくれた南さんを見た途端、歩くスピードは落ちていく。


今日の彼は黒のロンTにチェックのシャツ。ブラウン色のチノパンにスニーカーといった、とてもラフな服装だったから。

けれどどんなにラフな服装でも、着る人が違うとオシャレに着こなしている感が強い。

そもそも南さんなら、どんな服を着たって着こなせてしまいそうだ。