一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい

「そうか? 颯馬さん、意外と早く来るかもしれないぞ?」

「まさか。どんなに早くても十分前でしょ」

それよりもあと三十分後には彼とふたりっきりで会うのだから、少し心を落ち着かせておかないと。

いきなりふたりっきりになっても、緊張しないかな? そもそも話が噛みあうだろうか。

お見合いの日もこの前も、どことなく彼とは波長が合わない気がしたから。

会う以上は失礼がないようにしないと。


初めて叱られたから新鮮に感じただけであって、二回目は違うかもしれないし、ちょっとしたことで一々腹を立てないようにしよう。


そんなことを考えている間も、お父さんは居間の中をウロウロ。そして余程心配なのか、「ちょっと見てくる」と言って、玄関に向かい外へ行ってしまった。

「あっ、ちょっとお父さん?」

これではどっちがデートに行くのかわからないじゃない。


意外と冷静でいられるのは、お父さんのおかげかもしれない。私の代わりにこれでもかってくらい、お父さんが緊張してくれているから。