お父さんの大好物だし、もう一品にちょうどいいよね。

そう思い、早速だし巻き卵を作り終えたとき、来客を知らせるインターホンが鳴り響いた。

「え、一体誰だろう」


時刻は十九時過ぎ。

こんな時間に我が家を訪ねてくる人は滅多にいない。いるとしたらしつこい新聞勧誘くらいだ。


だったらお父さんに出てもらいたいところだけど、彼は今、上機嫌で鼻歌を口ずさみながら入浴中。さすがに裸で出てとは言えない。


ガスの火を止め、恐る恐る玄関へと向かう。

昔ながらの古い我が家には、インターホンはあるものの、相手が確認できるドアホンはない。


玄関に向かって「どなたでしょうか?」と尋ねると、意外な相手の声が返ってきた。


「ミャー、久し振り。南です」

「……え」

私のことを「ミャー」と呼ぶ南さんなんて、たったひとりしか心当たりない。

だからこそ、混乱してしまう。