「美弥ー、シャンプーの詰め替えってどこにあるんだ?」

この日の夜。

仕事が終わり先にお父さんにお風呂に入ってもらっている間に、夕食の準備を進めていく。

すると浴室の方からお父さんの声が聞こえてきた。


「洗濯機の上の棚だっていつも言っているでしょ?」

大きな声で聞こえるように答えると、少しして「ごめん、あった」と返ってきた。


この会話のくだりを、今まで何度してきたことか。シャンプーはもちろん、リンスもボディソープも同じ場所にあるっていうのに、毎回同じことを聞いてくるんだから。


味噌汁の味を確認したところで、少しおかずが少ないことに気づく。

「ちょっと物足りないよね、これだけじゃ」

冷蔵庫の中を確認すると、パックに入ったままの卵が目に入った。


そういえば先週、特売だからって仕事終わりの海斗にも来てもらって、お父さんと三人で三パック買ったんだっけ。

みんなのお茶うけにパウンドケーキでも作ろうかなって思っていたけれど、結局作らなかったんだ。

「そうだ、だし巻き卵でも作ろうかな」

卵を三つ取り出し、冷蔵庫のドアを閉めた。