海斗はいつもそうだ。

言葉とは裏腹に昔から私のことを常に気に掛けてきてくれた。同い年なのにまるでお兄ちゃんのように。


なにやっているのよ、私。なにも連絡がないんだもの、もうお見合いのことなんて忘れるべきなのに、いつまで引きずっているのよ。


おまけに海斗に余計な仕事をさせて、心配までさせちゃって。

気持ちを入れ替え、彼に心配させまいと笑顔を取り繕った。


「もー、海斗ってば変な心配しすぎ! 私もお父さんも別になにもないから」

「でも……」

引き下がらない海斗の声に自分の声を被せていく。


「本当に大丈夫! ……ごめんね、余計な心配させちゃって。なにかあったら、ちゃんと海斗に相談するから」

そう言うと海斗は納得してくれたのか、小さく息を漏らした。

「じゃあさっさと行こうぜ。先輩たちが待ってる」

「うん、ありがとう」


先に歩き出した海斗に、慌ててデータを保存してパソコンの電源落とし、事務所を後にした。

お見合いしたことは忘れよう。二度と会うこともない人なのだから。


それからみんなと談笑しながらいつものように休憩を取り、残りの勤務に当たった。