「痛っ」

すぐさま摘まれた鼻を両手で押さえ、海斗を睨む。

「なんだよ、はこっちのセリフなんですけど!」

抗議すると、海斗は深い溜息を漏らした。

「あのな、お前最近ボケッとし過ぎ。時計を見ろよ」

「時計?」

言われるがまま事務所の壁に掛かっている時計を見ると、十五時を回っていた。

「嘘っ! もうこんな時間!?」

ギョッとする私を見て、再び海斗は溜息を漏らした。


「そうだよ、いつまで経っても来ないから俺が呼びにきたの。それとお茶の準備はしておいたよ。先輩たちみんなもう休憩している」

「……ごめん」

これにはただ謝ることしかできない。

お茶の準備は私の仕事だ。みんなに振る舞うことも。

それをすべて海斗にやってもらってしまったんだもの。


「なぁ。……社長もだけど最近の美弥、おかしいぞ」

「え?」

探るような目で見つめられ、ドキッとしてしまう。


「さっきみたいにボケッとしている時間が多いし、仕事も抜けが多いし。社長も少し前、カラ元気だったけど、ふたりともなにかあったわけ?」

「海斗……」

探るような目から、心配している目へと変化していく。