一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい

「キャーなにそれなにそれ！　どこの王子様がすることよ！」

「ちょっと亜優ってば声が大きいから！」


年末の商店街はたくさんの人で賑わっている。そんな歩道で久し振りに会った亜優は悲鳴にも似た声を上げたものだから、慌てて人差し指を立てて彼女との距離を縮めた。


「……ごめん、だって美弥の彼こ言葉の破壊力がすごくて」

久し振りに会っても相変わらずな亜優に、「もう」と言いながら笑ってしまった。

南さんが出張へ行って五日目。今日、彼は帰ってくる。


お父さんの体調も回復に向かっており、昨日少しだけ作業所へ足を向けた。そこで話したのだ。これまでの経緯と、鈴木さんたちの想いを。


鈴木さんたちは戻れるものなら戻りたいと言ってくれているようで、来年から復帰してもらう予定だ。

その話をすると誰も嫌悪感を抱く人などおらず、誰もが安堵し喜んだ。

うちの会社の仕事納めは昨日。今日から年末休暇だ。


そんな年末休暇の初日、海斗と話していた鍋パーティーをやろうという話になり夕方の今、私と亜優は材料の買い出しに来ていた。