一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい

「……いいの? こんな僕で。そばにいてくれるの?」

「いさせてください! ……目の前にいる南さんのそばにいたいんです。南さんが大好きだから」


好きって気持ちを伝え、ここがたくさんの人が行き交う空港のロビーということも忘れ、自ら彼の胸の中に飛び込んだ。

「ミャー……!」

すると彼は私の身体を苦しいくらい抱きしめた。

苦しいけれど彼のぬくもりが愛しくて胸が痛い。好きすぎて胸が苦しいよ。


どれくらいの時間、抱きしめ合っていただろうか。南さんが乗る便の搭乗アナウンスが流れると、彼は名残惜しそうに私の身体を抱きしめる腕の力を弱めた。


顔を上げれば目と鼻の先で彼と視線がかち合い、ドキッとしてしまった。

「ごめんミャー。行かないと」

「あっ……」

ゆっくりと離れていく身体。咄嗟に彼の腕を掴んでしまった。


「待って下さい! 自分勝手な思いだって分かっていますけど、行かないでください! ……ずっと帰ってこないなんて私……っ」


「ちょっ、ちょっと待って! ちゃんと帰ってくるよ?五日後には」

「……へ?」

驚愕してしまい、随分と間抜けな声を出してしまった。