一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい

ビジネスバッグを手にしたスーツ姿の南さんが、ポケットからスマホを取り出していたから。

『……もしもし、ミャー?』

見つめる先で話す彼の声が、スマホを通して私の耳に届いた瞬間、感極まり涙が溢れ出す。

「南さん……っ」

会えたのが嬉しくて声が震えてしまう。

『え、どうしたのミャー。もしかして泣いているの?』


電話越しからは困惑した声が届く。そして目の前にいる南さんは慌てている。


一歩、また一歩と足を進め駆け寄っていく。スマホを耳に当てたまま。そして彼までの距離、一メートルのところで足を止めた。


「南さん……会いたかったです」

『……え』

次の瞬間、振り返った彼と視線がかち合うと、南さんは目を丸くさせ耳に当てていたスマホを下ろしていく。

「え……どうしてミャーがここに?」

酷く驚いている南さんに口元が緩んでしまう。涙を拭い彼との距離を縮めた。


「ごめんなさい。どうしても会って伝えたかったんです」

一度大きく深呼吸をする。伝えるんだ、今の自分の想いをすべて。

真っ直ぐ彼を見据えた。