一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい

「そんなこと……! むしろお礼を言いたいのは私の方です。私の方こそ南さ……颯馬さんと出会えて幸せでした」

「美弥さん……」

絶対に好きになるはずないような人だった。なのに好きになってしまった。

出会ってまだたったの数ヵ月なのに、どうしようもないほど好きになってしまった。

こんなに好きな人と出会えた私は幸せだと思う。幸せだからこそ、臆病になってしまうほどに。


「光栄なお言葉、ありがとうございました。……颯馬さんにもよろしくお伝えください」

するとなぜか南さんのお父さんは、困った顔をした。


「颯馬によろしく伝えられればいいのだが。……生憎しばらく会えなくなるんだ」

「え、会えなくですか?」

出張に出ているのだろうか。そう思ったんだけど……。


「自ら志願してね、サンフランシスコにある海外支社へ異動になったんだ」

「サンフランシスコ……ですか」

予想していなかった話に驚きを隠せない。