一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい

「あ……南さんのお父さん」

小声で答えた途端、海斗はギョッとし身体を強張らせた。

無理もない、だって相手はあのミナミグループの頂点に立つ会長なのだから。

「美弥さん、お久し振りです」

「お久し振りです」

声を掛けられ慌てて頭を下げると、海斗も一緒に深々と頭を下げた。

「美弥さん……少しいいですか?」

「え?」

顔を上げると、南さんのお父さんは眉を寄せ小さく頭を下げた。

「美弥、社長の退院手続き俺がやっておくから」

すかさず海斗がそう言ってくれて、私は南さんのお父さんと病室を後にした。


やって来たのは患者さんと面会に来た家族が、ゆっくり座って話せる談話室。誰もおらずシンとしている。

中に入るとひとつのテーブルの椅子に腰掛けた南さんのお父さん。

向かい合う形で私も腰を下ろした。


目の前に座っただけでどっと緊張してしまう。温厚で優しそうな印象のダンデイな方だけど、ミナミグループの会長としての貫禄があって縮こまってしまうよ。

つい身構えてしまっていると、南さんのお父さんは私を眺めながらしみじみと話し出した。