一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい

でもこれからは会えないのが当たり前になるんだよね。

『ミャー』って私のことを呼ぶ声も聞けない。私が作っただし巻きたまごを『美味しい』って言って食べてくれる姿を見ることもできない。触れることも、抱きしめてもらうこともできないんだ。


やだな、どうしてそんな当たり前なことに気づかなかったんだろう。会えないっていうのはそういうことなのに――。

「美弥、行こう？」

「あっ……うん」

海斗に声を掛けられハッと我に返り、先に歩き出していた海斗の後を追い掛けた。


どうかしている。会えない現実がどんなものなのか思い知って、胸を痛めているなんて。

傷つきたくないから一緒にいるのが怖いと思ったのに。どうして会えないことに寂しさを感じてしまうのだろうか。


海斗と並んでお父さんが入院している病室へ向かうと、意外な人物がそこにいた。

「え……」

ノックをしドアを開けると、そこにいたのはお父さんと南さんのお父さんだった。


ドアを開けたままびっくりしてしまい立ち尽くしてしまっていると、隣に立つ海斗が「美弥、誰？」と耳打ちしてきた。