一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい

「そんなとき、父が縁談話を持ってきたんだ。そろそろ身を固めて後継ぎを作れって。沢山の人のお見合い写真を渡されたよ」


そういえばお父さん、言っていたよね。会長からお達しがきたって。

息子の嫁候補はまずはグループの関係者が良いからって。


「どの人の写真を見ても、なにも感じなかった。いずれ会社のためにも結婚はしなくてはいけないのなら、誰でもいいって思っていたんだけど、キミの写真を見て一瞬で心を奪われたよ」


ドキッとしてしまうセリフに、胸が高鳴ってしまう。

けれどそれも束の間。彼は首を傾げてしまうようなことを言い出した。


「名前を見て運命だと思ったんだ。結婚するなら、この子しかいないって思った」

「……名前、ですか？」

聞き返してしまうと、彼は大きく頷いた。

え、どうして名前？　水谷美弥なんて、どこにでもいそうな名前だと思うんだけど。

そんな私の疑問に答えるように、彼はニッコリ笑顔でとんでもないことを口にした。


「キミのフワフワの髪といい、つぶらな瞳といいそっくりで驚いたよ。……ミャーと」

「ミャッ、ミャー……？」


どうしよう、嫌な予感しかしないんですけど。

自然と顔も引きつっていく。