「やっぱりみんな、鈴木さんと同じ話をしていたよ。交換条件に好待遇でうちに来ないかって誘われたって」

週が明けて三日が過ぎた水曜日の二十一時半。

私と海斗はふたり、誰もいない事務所で椅子に腰かけ話をしていた。

海斗は一昨日と昨日、退職した他の四人と会ってきた。そこではやはり鈴木さんと同じ話を聞いたようだ。


「それとこうも言ってた。誘ってきた男が社長令嬢直々のお話だから、安心して信じて来てくれって。笹本モーターズの社長夫妻にはひとり娘しかいない。……間違いないだろうな」

「……そっか」

やっぱり今回の件に笹本さんが関わっていたんだ。

予想していた通りの事実に重い空気が漂ってしまう。

「それで美弥の方はどうなの? あれから南さんと連絡取ったのか?」

月曜日から一度も南さんの話をされたことなかったのに、いきなり彼の名前を出されドキッとしてしまう。

「連絡は……あるよ、毎日。でも出ていない」

「そうか……だよな」

納得したように頷くと海斗は椅子の背もたれに体重を預けた。