海斗の歩くスピードは速くて、腕を引いてもらえていなかったら完全についていけていなかった。

けれど私も必死についていく。これ以上南さんと一緒にいたくなかったから。笹本さんと一緒にいる南さんなんて見たくない。


「ミャー……! あとで連絡するから!!」

背後から聞こえてきた彼の悲痛な声に一瞬足が止まりそうになる。

すると海斗は私の腕を引く力を強めた。

「泣かせてごめん! 今度ゆっくり話をさせて」

立ち止まることない私に向かって話しかけてくる南さん。


謝るくらいなら、どうして私のことを疑ったりしたの? 笹本さんを信じてしまう気持ちは理解できる。……でもせめて私のことも信じてほしかった。疑ったりしないでほしかった。


背後から車に乗り込むような音は聞こえてこない。もしかしたら私と海斗の後ろ姿を見送っているのかもしれない。

それでも私は振り返ることなど出来なかった。

悲しくて切なくて、胸がはち切れそうなほど苦しくて。

南さんだからこそ疑われてショックだった。


海斗に連れられて家の中に入っても涙は止まらず。そんな私の身体を海斗は優しく抱き寄せ、涙が止まるまでずっと背中を撫で続けてくれていた。