それなりに恋愛はしてきた。

異性を好きになったこともあるし、付き合ったこともある。こんな恋の始まりなんて、漫画や小説の中だけの話だと思っていた。


でも、現実でもあり得るって思ってもいいのかな? ……この先、彼と時間を共有していったら、私も彼のことを好きになってしまう?

こんなことを考えてしまった自分自身も信じられず、動揺してしまう。

なにも言えずにいると、彼は痺れを切らしたように言ってきた。

「やっぱりまだ信じられない? ……僕の気持ち」

「それは……」

言葉が続かない。素直に言えばもちろん信じられない。

けれど、真剣な瞳を向けられてしまうと、言えなくなる。

すると彼はなにかを思い出したようにハッとし、慌ててスーツの内ポケットからスマホを取り出した。

「これを見てくれる?」

そう言うと彼は自慢げにスマホの画面を私に向けてきた。

「……えっと、これは?」

差し出された彼のスマホの画面に映し出されていたもの。

それは可愛らしいトイプードルの写真だった。