一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい

なにより南さんは彼女に対して絶対的な信頼を寄せている。

そんな彼女が今回の件に関わっているなんて、正直信じたくない。信じたくないけど……っ!


脳裏に浮かぶのは、今まで鈴木さんたちと過ごしてきた日々や、あの日からのみんなの様子、そしてお父さんの姿。


もし……もし本当に今回の件に笹本さんが関わっているとしたなら、絶対に許すことなんてできない。

人の弱みに付け込んでこんなことをするなんて、あんまりだ。

ましてやその理由が私に対するものだったとしたのなら余計に。

沸々と怒りが込み上げてきてしまい視線を落とし、拳をギュッと握りしめてしまう。


「美弥……俺、悪いけど今回の件で本当に南さんの秘書が関わっているとしたら、お前と南さんのこと応援できねぇから」

「……え」

感情を必死に抑えて話す海斗。顔を上げると彼の瞳は赤く染まっていた。


「だってそうだろ? 許せねぇじゃん。確かに鈴木さんたちが悪いと思う。でも鈴木さんたちの弱みにつけ込んで、盗みをやらせて裏切らせて。そんなことさせて許せるわけねぇよ。……社長や先輩たちまで傷つけて、こんなやり方おかしいだろ!?」