一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい

「それにいつまでも塞ぎ込んでなんていられねぇしな。五人抜けちまった穴は、いくら募集かけてもすぐには埋まらないだろうし、年末で今月の納期はいつもより早い。……こっちの都合でミナミ自動車に迷惑をかけるえわけにはいかねぇ。ましてや相手は美弥の結婚相手なんだから」


「お父さん……」

お父さんはニッと歯を覗かせ、私を安心させるように笑った。


「父さん、今まで以上に頑張るからな。俺のせいで美弥の結婚に傷をつけるわけにはいかねぇ。年が明ければ人も入ってくるだろ、それまで踏ん張るさ」


前向きなお父さんにホッとし、気持ちが込み上げてきてしまった。

「うん……私もできるかぎり協力するからね」


「おう、よろしくな。……でも悪いが、今回のことは颯馬さんには内緒にしてくれな。結納前に余計な心配掛けたくないし」

「わかったよ」

お父さんが言うなっていうなら、絶対言わない。

「じゃあ父さん、もう行くから」

私の返事を聞いて安心したお父さんは、玄関へと向かっていく。