けれど事務所内はシンと静まり返っていて、誰かいる気配は感じられない。それに事務所内も荒らされた形跡はなくいつも通り。


「あれ……? やっぱり私が鍵を締め忘れちゃっただけなのかな」

拍子抜けしてしまい、事務所内へ足を進めていく。


けれどつい自分のデスクやお父さんのデスクを確認していくと、目に入ったのはお父さんのデスクに置かれた五通の白い封筒。

「……なにこれ」

白い封筒すべてに同じ三文字が書かれていた。“退職願”と――。

慌てて手に取り事務所を飛び出した。

退職願だなんて誰が……? しかも五人も?


金曜日までみんな普通に仕事をしていた。休憩中はいつも通り他愛ない話で盛り上がって。

なにかの冗談だよね? 五人も辞めてしまうなんて。手の込んだいたずらだよね。

本当は今すぐに中を確認したいけれど、さすがにお父さんより先に見るわけにはいかない。


全速力で作業所にいるお父さんの元へ向かった。

「お父さん……!」

誰もいない広い作業所に自分の声が響き渡るも、シンと静まり返っていて何の物音も聞こえてこない。