お父さんと一緒に暮らせるのも数えるほどしかないはず。こうやってふたりで出勤できるのもそうだ。

だから今はお父さんとの時間を大切にしたいって思ってしまった。

「一度事務所に寄ってから行くね」

「わかった」

お父さんと別れ、事務所へと向かった。

週明けだしファックスや留守電が溜まっているかもしれない。


鍵を取り出し、ドアのカギ穴に差し込み回すも回らない。

「……あれ?」

一度鍵を抜き、そっとドアノブに手をかけるとドアが開いた。

うそ、やだ。もしかして私……先週の金曜日鍵を締め忘れちゃった?


記憶を呼び起こすものの、いつも戸締りだけはしっかりしてきた。なのに鍵を締め忘れたとは到底思えない。

ってことはもしかしてまさかの空き巣に入られたとか……?

いや、でもうちの事務所に金目のものなんて置いていないし、入られるわけがない。

入られたとしても今は朝だ。いまだに事務所内に犯人がいるとは考えられない。

とにかく確認しないと。


ゴクリと生唾を飲み込み、念のためなにかあったときすぐに通報できるよう、110番をダイヤルした状態のスマホをギュッと握りしめ、恐る恐るドアを開けた。