「おーい美弥、父さん先に行くぞ」

「え、もうそんな時間!?」

洗面所で髪を整えていると、玄関先からお父さんの声が聞こえてきて慌てて向かった。

居間の電気を消したとき、時計を見ればいつも家を出る時間より三十分も早い。

なに？　お父さんってば月曜日から早速ボケちゃっているのだろうか。


「お父さん、まだ早いよ？」

玄関先に向かうと靴を履き終えたところで立ち上がった。


「わかっているさ。そろそろ新しい部品のサンプルが完成するんだ。だからみんながこないうちに少しでも進めようと思ってな」

「……そっか。じゃあ私も一緒に出るからちょっとだけ待ってて」

急いで居間に置いてあるバッグを取りに向かった。

「美弥はいつも通りに来ればいいぞ？」

バッグを手にし、玄関へと戻っていく。


「いいよ、一緒に行く。お父さんもひとりで作業していたら寂しでしょ？　だから私が話し相手になってあげる」

靴を履きながら言うと、お父さんは目を見開いた後どこか嬉しそうにハニかんだ。

「確かにそうだな。ひとりで黙々と作業をするより、話し相手がいた方がいいな」

「でしょ？」

お互い顔を見合わせ笑い合いながら家を出た。