「ありがとうございました」

深々と頭を下げたスタッフに見送られショップを出ると、南さんは安心したように微笑んだ。

「よかった、ミャーが気に入ってくれるものがあって」

「あの、本当にありがとうございました。……あんな高価なものをいただいてしまって……」

私には勿体ないくらい素敵な指輪だった。


「そんなこと気にしないで。……それに結納では、はめた状態で行くんだよ? 父さんもいるのに、みすぼらしいものを贈るわけにはいかないんだ。僕のメンツを保つだめだと思って、遠慮なく受け取ってくれる?」

そう言われてしまっては、「はい」としか言いようがない。

「ありがとうございます」

素直にお礼を言うと、南さんは繋いだ手を握る力を強めた。


「どういたしまして。じゃあ次行こうか」

「え、次……ですか?」

すると南さんは駐車してあるパーキングを通り過ぎていく。

あれ、パーキング通り過ぎちゃったけどいいのかな?

彼を見てしまうと、南さんは得意気に笑った。