一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい

ドアを閉め数メートル歩みを進めたところで、立ち止まってしまう。

「もう、お父さんってば何を言い出すかと思えば……」


肩を落としながらも、空を見上げれば雲ひとつない青空が広がっている。夜になると寒くなりそうだけれど、南さんと会う日が雨じゃなくてよかった。


再び足を進め、敷地内にある駐車場へ向かうと、タイミングよく一台のSⅤ車が入ってきた。

あれはたしか、お泊りした次の日の朝、自宅まで送っていってくれた車だったはず。

駆けて車の元へ行くと、運転席から降りてきたのはやっぱり南さんだった。


「ミャー、ごめん遅くなって」

「そんな早いですよ」

南さんは素早く助手席に回り、ドアを開けてくれた。


この前のような紳士的な振る舞いに慣れず、「すみません」と謝りながら、おずおずと乗り込むとドアを閉めてくれた。

相変わらずスマートな動作に、戸惑いを隠せない。

シートベルトを締めると南さんも運転席に乗り込み、いきなり抱きついてきた。