一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい

「あー……美弥、父さんは別に今日帰ってこなくても、怒らないからな」

「……それに対して私はどう答えればいいのよ」

迎えた土曜日の午後、十四時四十五分。


南さんとの約束の時間まであと十五分。そろそろ家の外に出て待っていようと思い、お父さんに「いってくるね」と言い、玄関に向かったわけだけど、なぜかお父さんも後を追ってきて、わざとらしく咳払いをしながら、とんでもないことを言ってきた。


パンプスを履き終え立ち上がりお父さんを見ると、視線を泳がしていた。


「いや、だってお前……いい歳した恋人同士なわけなんだから、別に泊まっても不自然じゃないだろ? 連絡を入れてくれればいいから」


こんな話をされて、こっちが恥ずかしくなってしまうよ。


けれどお父さんはお父さんなりに、気遣ってくれているのかもしれない。それに相手は南さんだからこそ、信用してくれているのかも。


「わかったよ。……じゃあそのときは、ちゃんと連絡するから」

「……あぁ。颯馬さんによろしくな」

お互い照れ臭くてまともに顔を見られなくなり、そそくさと家を後にした。