十月下旬。季節はそろそろ秋は終わるを告げ、冬の始まりを迎えようとしていた。

「ただいまー」

夕方の十八時前。誰もいないとわかっていても、つい言ってしまう。

洗濯物を取りこみ、お風呂を荒って沸かして夕食の準備に取り掛かったとき、お父さんが帰ってきた。

「あ、おかえりなさい。お風呂そろそろ沸く頃だと思うよ」

包丁で野菜を刻みながら言うと、なぜかお父さんは「あー……うん」と言葉を濁した。

手を休めお父さんを見ると、気まずそうに視線を泳がせながら頬を指で掻いていた。


「え、ちょっとまさか今日も寝る前に入るつもり?」

「いや……ほら、急に出掛けることになったら湯冷めしちまうだろ?」

「お父さん……」


あの日、お父さんに南さんと一緒のところを見られてからというもの、お父さんは変な気遣いばかりしてくる。

あの日から二週間近く経つけれど、南さんは相変わらず仕事が早く終わった日には、我が家を訪れている。