「なんでも会長のひとり息子でもある、現副社長の結婚相手を探しているらしくて」

ひとり息子の存在は知っている。

よくワイドショーの【華麗なる一族】コーナーみたいなので、取り上げられているのを見たことがあるから。

メディア映えする出で立ちをしていた気がする。

「会長も今年で六十五歳になるし、二十七歳になる息子の将来を心配されているらしくてな。なのにその息子はまったく恋愛に興味がないようで」

ちょっと待って。この話の流れ……。もしかして私のお見合い相手って……。

「まさか私のお見合い相手が、その副社長とか言わないよね？」

引きつる笑顔で聞くと、お父さんは気まずそうに頬を掻きながらヘラッと笑った。

「驚くなかれ、そのまさかなんだよな」

信じがたい話に絶句してしまう。

だって普通に考えてあり得ないじゃない。あの雲の上のような存在な人と私がお見合い!?

「いやいや、なにかの間違いじゃないの？　そもそもどうして私なんかがそんな人のお見合い相手に？」

混乱状態でいつもより早口になってしまう。そんな私にお父さんは事の経緯を話していった。