一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい

「いやいや、まさか!」


だって相手は南さんだよ? 住む世界が違い過ぎるし、第一彼は私のことを本気で好きじゃないはず。ただ亡くなった愛犬に似ているからであって……。


「やだな……」

どんなに言い訳したって、南さんのことばかり考えてしまうよ。


自分の気持ちの変化が信じられなくて、茫然と立ち尽くしてしまっていると、玄関のドアがしまる音が背後から聞こえてきた。

過剰に身体が反応してしまい振り返ると、南さんが立っていた。

「ミャー……? どうかした?」

近づいてくる彼に、恥ずかしさが込み上げてきてしまう。

意識しちゃっているから? だからこんなにもドキドキしてしまっているの?

「すみませっ……! なんでもないです、今ご飯の準備しますね」


なぜか南さんの顔をまともに見ることができなくて、早足で彼の横を通り過ぎたとき。

「待って」


私の腕を掴んだ南さん。足は止まってしまい彼を見ると、なぜか神妙な面持ちで私を見つめていた。


「……南、さん?」

切れ長の瞳に吸い込まれたかのように、微動だにできなくなってしまう。