野ざらしな高原。それを埋め尽くさんとする鎧をつけた男たちが蠢く。
青い旗をかざした100万人の者たちが、赤い旗の者たちへ、容赦のない攻撃をあびせていた。
「も、もう!これ以上は・・・!」
赤い旗の兵士たちは、圧倒的な数の暴力に防戦一方で後退していった。
その赤い旗の中心には、麗しい姫が青ざめていた。
(このままでは・・・!一体どうすれば!)
青い旗の兵士の中から、屈強な男が馬に乗りながら前へと踏み込んで来た。
「諦めよ、ルディア王女殿下。そなたは私が、奴隷として扱ってやろう。光栄に思うがいい!ふっはっはっは!」
高らかに男の声が響いた。青き旗の隊長・アーガイルは姫であるルディアに向かって言い放った。
「・・・こんな事をして、一体何になるというのですか!争い・奪い合い・殺し合う・・・愚かなことです!」
彼女は必死にアーガイルへと怒鳴ったが、青き旗の兵士たちからはどっと笑いが出た。
「所詮は力なのだ!そなたの国【アルカディア】は我ら【ダーグルス】が頂く!もはやそなたらに勝機なし!虐殺せよ!!・・・ただしルディアは無傷で捕らえよ。」
いきり立つ青き兵士たち。
「ひ、姫様!姫様だけでもお逃げください!!」
もはや風前の灯火・・・となった時だった。
アルカディア軍の後方から、宙を舞い、着地した漆黒の衣と2本の剣を持った青年が現れた。
しゃがんだままの青年に、ダーグルス軍の兵士たちは、時が止まり異様な静けさが立ち込める。
静かに立ち上がる青年の肩に乗っていた猫がしゃべり始める。
「・・・やれやれ、まさに絶好のタイミングってやつだね。さて、どうするんだい?」
「・・・決まっているだろ・・・ダーグルスとかいう連中を潰す。」
「そう言うと思ったよ・・・君はいつもトラブルに首をつっこみたがる癖があるからねぇ・・・治したらどうだい?」
「・・・それが俺の使命だからな。」
淡々と話す一人と一匹の会話に呆然となっていたアーガイルは、我に返り、漆黒の青年に声を向けた。
「何者だ?アルカディアの騎士か何かか?」
すると答えたのは青年ではなく猫だった。青年はフードをかぶり顔までは確認できない。
「アーガイルだっけ、君?逃げたほうがいいよ、私の主人は短気だ。あっという間にやられちゃうよ?あ、ちなみに忠告だからね。」
その言葉に怒りを覚えたアーガイルは、声を荒らげる。
「忠告だと!笑わせる!この数を相手に貴様一人で何が出来るというのだ!」
「猫の忠告は聴くもんだよ。あ、忘れてた。・・・降るよ、赤い血の雨が、ね・・・。」
青年がその言葉に腰に携えていた大振りな剣を抜き去ると、異様な空気に包まれた。
「たかが一人だ!殺してしまえ!」
その声に、剣を振りかざし、むかってくるダーグルス軍兵士たち。
絶対絶望なその状況に、目を疑う事態が起こった。
ブゥン!
青年のたった一振りの剣撃に全面に配置されていた兵士がまっぷたつに切り裂かれ、赤い血の雨が地面を濡らした。
そのたった一振りで1万の兵が死んだのだ。
「な、何が・・・起きた!?」
「まったく・・・猫の忠告は聞くもんだよ?」
その姿にルディアは、彼に問う。
「貴方は一体・・・?」
その言葉は届くことはなく、低く構えると青年は100万人相手に向かっていく。
それは瞬きした一瞬の出来事だった。隊長であるアーガイル以外の兵士が、一瞬で斬り刻まれていった。辺りが一面、凄惨な血の海と化し、兵士たちは亡骸となっていった。
「・・・なんだ・・・何が起こった・・・?」
静まり返る野原に、血の滴る音が響く。
辺りを見回して、言葉をなくすアーガイル。
ザシュッ!
突如、アーガイルの胸に剣が突き刺さる。
「が・・・ガハッ・・・何、者、なの、だ・・・貴様・・・」
「おまえが知る必要はない」
たった一瞬で100万人を斬り殺した青年だったが、返り血すら浴びていない。青年は剣をしまうとアーガイルを思い切り蹴り飛ばした。
吹っ飛んだアーガイルは息絶えた。
青年はそのまま立ち去ろうとする。
ルディアは彼に慌てて礼を言おうと声を上げる。
「助けていただき、ありがとうございます!どうか、我が居城まで、お礼をさせてください。」
すると青年は振り向きもせずに
「断る。忙しいのでな。」
「ま、そういうわけで♪」
立ち去ろうとする青年に再びルディアの大声が響いた。
「せめて!せめてあなたの名前だけでも!」
すっと立ち止まると彼はこう答えた。
「ユーリ・・・ユーリ・アーウェンブルグ」
すると青年はスっと姿を消した。
後に彼はこう呼ばれることとなる。
【漆黒の救世主】・・・と。
青い旗をかざした100万人の者たちが、赤い旗の者たちへ、容赦のない攻撃をあびせていた。
「も、もう!これ以上は・・・!」
赤い旗の兵士たちは、圧倒的な数の暴力に防戦一方で後退していった。
その赤い旗の中心には、麗しい姫が青ざめていた。
(このままでは・・・!一体どうすれば!)
青い旗の兵士の中から、屈強な男が馬に乗りながら前へと踏み込んで来た。
「諦めよ、ルディア王女殿下。そなたは私が、奴隷として扱ってやろう。光栄に思うがいい!ふっはっはっは!」
高らかに男の声が響いた。青き旗の隊長・アーガイルは姫であるルディアに向かって言い放った。
「・・・こんな事をして、一体何になるというのですか!争い・奪い合い・殺し合う・・・愚かなことです!」
彼女は必死にアーガイルへと怒鳴ったが、青き旗の兵士たちからはどっと笑いが出た。
「所詮は力なのだ!そなたの国【アルカディア】は我ら【ダーグルス】が頂く!もはやそなたらに勝機なし!虐殺せよ!!・・・ただしルディアは無傷で捕らえよ。」
いきり立つ青き兵士たち。
「ひ、姫様!姫様だけでもお逃げください!!」
もはや風前の灯火・・・となった時だった。
アルカディア軍の後方から、宙を舞い、着地した漆黒の衣と2本の剣を持った青年が現れた。
しゃがんだままの青年に、ダーグルス軍の兵士たちは、時が止まり異様な静けさが立ち込める。
静かに立ち上がる青年の肩に乗っていた猫がしゃべり始める。
「・・・やれやれ、まさに絶好のタイミングってやつだね。さて、どうするんだい?」
「・・・決まっているだろ・・・ダーグルスとかいう連中を潰す。」
「そう言うと思ったよ・・・君はいつもトラブルに首をつっこみたがる癖があるからねぇ・・・治したらどうだい?」
「・・・それが俺の使命だからな。」
淡々と話す一人と一匹の会話に呆然となっていたアーガイルは、我に返り、漆黒の青年に声を向けた。
「何者だ?アルカディアの騎士か何かか?」
すると答えたのは青年ではなく猫だった。青年はフードをかぶり顔までは確認できない。
「アーガイルだっけ、君?逃げたほうがいいよ、私の主人は短気だ。あっという間にやられちゃうよ?あ、ちなみに忠告だからね。」
その言葉に怒りを覚えたアーガイルは、声を荒らげる。
「忠告だと!笑わせる!この数を相手に貴様一人で何が出来るというのだ!」
「猫の忠告は聴くもんだよ。あ、忘れてた。・・・降るよ、赤い血の雨が、ね・・・。」
青年がその言葉に腰に携えていた大振りな剣を抜き去ると、異様な空気に包まれた。
「たかが一人だ!殺してしまえ!」
その声に、剣を振りかざし、むかってくるダーグルス軍兵士たち。
絶対絶望なその状況に、目を疑う事態が起こった。
ブゥン!
青年のたった一振りの剣撃に全面に配置されていた兵士がまっぷたつに切り裂かれ、赤い血の雨が地面を濡らした。
そのたった一振りで1万の兵が死んだのだ。
「な、何が・・・起きた!?」
「まったく・・・猫の忠告は聞くもんだよ?」
その姿にルディアは、彼に問う。
「貴方は一体・・・?」
その言葉は届くことはなく、低く構えると青年は100万人相手に向かっていく。
それは瞬きした一瞬の出来事だった。隊長であるアーガイル以外の兵士が、一瞬で斬り刻まれていった。辺りが一面、凄惨な血の海と化し、兵士たちは亡骸となっていった。
「・・・なんだ・・・何が起こった・・・?」
静まり返る野原に、血の滴る音が響く。
辺りを見回して、言葉をなくすアーガイル。
ザシュッ!
突如、アーガイルの胸に剣が突き刺さる。
「が・・・ガハッ・・・何、者、なの、だ・・・貴様・・・」
「おまえが知る必要はない」
たった一瞬で100万人を斬り殺した青年だったが、返り血すら浴びていない。青年は剣をしまうとアーガイルを思い切り蹴り飛ばした。
吹っ飛んだアーガイルは息絶えた。
青年はそのまま立ち去ろうとする。
ルディアは彼に慌てて礼を言おうと声を上げる。
「助けていただき、ありがとうございます!どうか、我が居城まで、お礼をさせてください。」
すると青年は振り向きもせずに
「断る。忙しいのでな。」
「ま、そういうわけで♪」
立ち去ろうとする青年に再びルディアの大声が響いた。
「せめて!せめてあなたの名前だけでも!」
すっと立ち止まると彼はこう答えた。
「ユーリ・・・ユーリ・アーウェンブルグ」
すると青年はスっと姿を消した。
後に彼はこう呼ばれることとなる。
【漆黒の救世主】・・・と。