説明書きの詰まったパネルの中を縫うように進むと、広々とした展示スペースに出た。

[バージェス動物群]と書かれた看板が吊り下げられたメインらしき場所を、博物館の落ち着いた照明が煌々と照らしている。
そこには、虫のような、エビのような、SF映画に出てきそうな生物らしき模型が大量に置いてある。

「これこれ!俺が見たかったやつ!」

彼はキラキラ目を輝かせて模型を見つめたが、一歩、一歩とそこから離れた。


「…なんか…立体のをよくみると…なんか…」

『不気味?』


私は、遠巻きに見ていたときから感じつつ、楽しそうな結人くんの姿を見て心にしまっていた一言を発した。

「うん。…なんかゴメン。」

博物館の落ち着いた照明が、どんよりと模型の生物たちの顔に影を作っている。

無言の結人くんの目の前でキテレツな生物の群れが、動いている途中のポーズでフリーズしている様を客観的に見ていたらじわじわと面白さが込み上げてきた。

この博物館は撮影OKだから…

『手を前に伸ばして』

「こう?」

彼は左手をだして前に伸ばした。

『手を開いて』

「…こう?」

彼は手のひらをパッと開いた。

私はすすっ、と良い感じに撮れる所に移動してぱしゃり、と写真を撮った。