「てーきまー」

なんて、適当な挨拶を玄関で言い放ち、外へ出る。帰って来るのは、「行ってらっしゃいませ」なんて、十数人のメイドと執事の声。

「怜夜様、行きましょう」

広すぎる庭を抜け、門の外に出ると、執事が待っていた。

「……いや、いい。運動不足になるから歩いてく」

目をそらしながらそう言うと、帰って来るのは、予想通りの返事。
鬼の形相でこちらを怒鳴る声が庭に響く。

「いけませんっ!事故にでも遭ったらどうするのですか!?」

お前の声で耳の鼓膜が事故ってる。
そんな感想が頭に浮かんだ。
山田君!座布団10枚持ってきて!


「はぁ……分かったよ。遅刻するから早くして」


執事の返事も聞かず、黙って車に乗り込んだ。