その時ケイが、

隣の部屋から食事を手にやって来た。


「さぁ食事にしましょう…

こんな物しかないけど」

そこには見るからに固そうな一切れのパンと、

火が通されていない葉物の野菜が、

僅かに並んでいるだけであった。


「食べられる時に食べておかないと、

またいつ食べられるか判らないわよ」

「奧にあるのは食べ物じゃないの?

あんなにあるじゃない!」

「確かにあるわ、

けどあそこにあるのは、

火を通さなければ食べられない物ばかりなの」

「でも火を通せば食べられるんでしょ!」

「それがダメなのよ…」

「どうして?」

「火を使えば煙が出るでしょ?」

「当たり前じゃない!」

「煙が出れば敵に見つかりやすくなってしまうのよ…

こんな所で見付かってしまったら、

逃げ場が無いでしょ、

だから火を使わなければならない食料は、

外で野宿する時に調理した方がましなの、

その時は最小限の食料を持って外に出て、

どうしても外で食事をとらなけばならない時のみ外で調達するの…

いつここに戻れるか判らないからね、

と言っても明日ここを出発したら、

戻って来る事はないと思うけど…

そもそもあの食料も、

私達が蓄えた物じゃないの…

この隠れ家自体、

元々私達の仲間が使っていた、

偵察の為の中継地点なのよ!」