そんなある日、
坂田家に一本の電話が鳴り響いた。
「はい、坂田ですけど…」
「もしもし、
私は四丁目のスーパーで店長をしている金子と言います」
「スーパーの店長さんが何の用ですか?」
「ちょっと伺いたいのですが、
そちらに武彦君という男の子はいらっしゃいますか?」
「武彦はうちの子ですが、
それが何か…」
「実は万引きをしましてね、
今ここにいるんですよ」
「何かの間違いじゃありませんか?
武彦は今頃学校に行っているはずですけど…」
「いいえ間違いではありません、
お子さんは今ここにいます!
ですから迎えに来てあげてもらえませんか?」
「だから武彦は学校だと言ってるじゃないですか!
もし仮に武彦がそちらのスーパーにいたとしても、
うちの子がそんな事する筈ないじゃないですか!
ですから迎えに行く必要などありません!
そもそも武彦が万引きをしたと言いますけど、
ほかの子と間違えたんじゃないですか?」
余りにも頑なに我が子をかばう美智代の発言に、
呆れかえってしまう金子であった。
「困りましたねぇ、
お母さんがそんなでは」
大きなため息をついてそう言うと、
更に続ける金子。



