「武彦ちゃん、
あなた学校に行きなさい」
思ってもいなかった美智代の意外な言葉に、
驚いた武彦は理由を尋ねた。
「どうして?ママ…」
「いいから行きなさい!」
「分かった、行くよ」
武彦にとって、
美智代の言う事は絶対であり、
仕方なく美智代の言う事に従った武彦だが、
それでも納得した訳ではなかった。
武彦に学校に行く様に言った美智代だが、
本当のところは岡嶋達にこれ以上来て欲しくない為に言った言葉であった。
こうして再び学校に来る様になった武彦であったが、
当初は半日で帰ってしまう日もあれば、
丸一日休んでしまう日もあった。
そうする内に僅かずつ学校に来る日を増やしていった武彦であったが、
そのペースは非常に遅く、
二ヶ月経っても未だ教室へ行く事は出来ないでいた。
それでも美智代に言われた為保健室登校だけは続けていた。
だがその頃の武彦は、
六年生に進級して間もなくした頃から、
塾でどんなに良い点を取っても美智代に褒めて貰えなくなってしまっていた。
その為自分が何の為に頑張っているのか、
疑問と共に苛立ちを感じる様になってしまっていた。
そんな状態の中、
母親や教師からは学校へ行くように言われ、
その一方で保健室までは来る事が出来ても、
クラスメイトの待つ教室までは行けずにいる自分がいた。



