直ぐさま両親は医師のもとへ駆け寄り、
武彦の状況を尋ねる。
「先生、息子はどうなんです!
助かったんですか?」
「最善は尽くしました!
ですが未だ予断を許さない状況です!
あとは彼の生命力にかけましょう!
とにかく彼は、
数日間ICUで様子を見ます、
その後の経過を見てからでなければ、
何とも言えません!」
医師の言葉にうなだれる両親、
その後両親はICUへ向かうが、
ガラス越しに我が子の様子を見守ることしか出来ず、
歯痒い思いをしていた。
看護士の手厚い看護のもと、
峠を越えることが出来た武彦は、
一週間ICUで過ごし、
その後一般病棟に移ることが出来た。
しかし本来ならば既に意識が回復しても良いのだが、
一週間経った今でも未だ意識が回復しておらず、
眠り続けたままでいた。
武彦が一般病棟に移ってもその状況は続き、
一般病棟に移ってから、
およそ二ヶ月の時が経っていた。
そしてその日は何の前触れもなく訪れた。
それは桜の舞い散る、
麗らかな午後の出来事であった。
この日看病を続けていた美智代が、
武彦の傍らでベッドの上に両腕を置き、
そこに顔を付け、
ついうとうとしてしまっていると、
意識が遠のくその中で、
何かがピクピクと動く物を感じた。



