「救急車!早く!」
高橋の声に我に返った伊藤は、
慌てて事務所に戻ると119番をし、
その直後、
武彦の両親にも連絡された。
「はい、坂田です…」
電話口に出た声は、
母親である美智代の声であった。
「お母さんですか?
あゆみの学園の伊藤です。
すぐに来て下さい!
武彦君が屋根から飛び降りました!」
美智代はショックのあまり、
その場に立ち尽くしてしまった。
「お母さん?もしもし?
聞いてますか?お母さん」
その時すぐそばにいた武雄は、
美智代の様子がおかしいことに気付き、
美智代の手からそっと受話器を取ると、
そのまま電話を替わり話し始めた。



