シグナル


この時ビデオの映像に写る自分の姿を見た武彦は、

一気に現実世界へと意識を取り戻し、

更に小嶺医師の説明により、

それは完全なものとなって行った。


だがその事を信じたくない武彦は、

突然激しい口調で話し始めた。


「ちょっと待って!

さっきのビデオ本当に僕なの?

さっきから聞いてると、

僕が人を殺したみたいじゃない、

勝手なこと言わないでよ、

僕が人を殺すわけ無いじゃない」

少し間があいた後、

突然武彦が思い出した様に、

ある言葉を口にした。


「大丈夫だよ、

またリセットすれば良いじゃない!」

この発言に一同凍り付いてしまった。


暫くすると、

一時の沈黙を突き破るように、

武彦に対して小嶺が語り始めた。


「武彦君…

これはゲームとは違うんだ!

一度死んでしまったら、

生き返る事は出来ないんだよ!」

「嘘だよ!じゃあ僕どうなるの?

人殺しになっちゃうの!

刑務所に入りたくないよ!」

「落ち着きなさい!」

判事がなだめるが、

落ち着く気配は無く、

退廷させられる武彦。