シグナル


更にこの時、

判事たちの頭の中はかなり混乱していた。


「ちょっと待ってください、

そんな事がありえるのですか?

仮想と現実の区別がつかなくなるなど…」

「正直…この様な事例は初めてなので、

私にもよく分かりません、

心理学を専門にしている私でさえ驚いた程です。

ですがこれは診断結果…

特に先程御覧いただいた催眠療法に現れています。

したがってほぼ間違いないでしょう…」

「それがなぜ殺人事件にまで発展してしまうのですか?」

「恐らく事件後の彼の発言から、

完全に仮想の世界へと意識が移ってしまった彼は、

その中で戦争の様なものを体験したのでしょう、

その後彼の意識は現実に戻るのですが…

完全には戻らず、

周囲の人々を敵の人間と勘違いしてしまい、

あの事件につながったようです!

したがって私としては、

当初医療施設に収容し、

治療を行うことが適切かと思っていましたが、

どうやら最近になり、

改善傾向にあるように思えます。

私の診断結果は以上です、

最後に私からの意見を述べさせていただいて宜しいでしょうか?」

「それは直接事件に関係する事ですか?」

「ええ、そうです!

と言いますか、

今後この様な少年を出さない為の提案を、

私からの要望として申し上げたいのですが…」

小嶺の願いとも言える言葉に興味を抱いた判事は、

小嶺の発言を許可する事にした。