シグナル


この時小嶺は武彦への影響を考え、

一度は武彦を退廷させようと考えたが、

多少荒っぽいが、

自分の映像を見ることで、

自らを取り戻すのではないかと考え、

治療の一環としてあえて退廷させずに、

武彦にもビデオを見てもらうことにした。


「このビデオテープには、

催眠療法を行った時の様子が収められています。

このテープは後ほど証拠として提出します」

セッティングを終え、

ビデオテープをデッキに入れると、

再生ボタンを押す小嶺。


一瞬の静寂が法廷内を包み込むと、

次の瞬間、

モニターから映像が映し出される。


静寂の中、

映像の中の小嶺と武彦の声だけが聞こえており、

判事達は真剣な眼差しでその映像に見入っている。


だが映像の中の武彦が異世界の体験を語りだすと、

それが次第にどよめきへと変わっていった。