シグナル


その二日後、

両親からの話をふまえ、

武彦への催眠療法が行われた。


小嶺の手により眠りに落ちていく武彦。


「さあ武彦君…ゆっくり目を閉じてごらん…

まずは君が我々に捕らえられる、

一日前へと時間を遡って行こうか…

今君は何処にいる?」

この時小嶺は、

武彦の意識に逮捕されたと言う認識がないと感じていた為、

敢えて捕らえたという表現をした。


「まわりに何が見えるかな?」

「ラルフがいる…

ラルフと銃の訓練をしている…」

「それはどう言う事?」

「敵と戦っているんだ!」

「どうして戦っているの?」

「奴等はこの世界を滅ぼそうとしているんだ!

奴等が攻めてきた!

やだ死にたくないよ、怖いよ!」

「大丈夫だよ武彦君…

君は死なないから…」

「よ~し!それじゃあもう少し時間を溯ってみよう…

今度は何処にいるかな?

ここは何処だろう…」

「誰か来た!

僕がゲームの世界に迷い込んだって?

そんな事ある訳ないじゃない!」

「君はゲームの世界に迷い込んだの?

じゃあそうなる前の事を思い出してみようか…

もっと時間を遡るよ…

今度は何処にいるのかな?」

「ママ!どうして百点取ったのに、

いつも褒めてくれないの?

僕だってたまには褒めて欲しいのに…

あまり僕に期待しすぎないで、

辛いんだ!」

小嶺はあまりにも事前の調査と符合する点が多く、

これで十分だとの思いから催眠を解いた。