「武彦ちゃん、

お夜食もってきたわよ」

ドアを開けながら言う母の言葉に、

机にかじりつきながらペンをはしらせていた手を一瞬だけ止め、

返事をする武彦。

「適当に置いといてママ…」

「じゃあここに置いておくわね…」

母親はガラステーブルの上に夜食のうどんを置くと、

すでに聞き飽きている、

いつもの言葉を口にする。


「どう…勉強はかどってる?

次こそ受かって貰わなくちゃね!

その為に高い月謝払って、

有名進学塾に通わせてあげてるんだから」

「分かってるよママ…

次こそ頑張るから心配しないで!」

「お願いね!

ママあなたに期待してるんだから…」

「はいママ…」

机に向かいながら返事をする武彦。

「じゃあ勉強頑張ってね!」

その言葉を残して母親は部屋を出ていった。

だが武彦は、

この【がんばって】

という言葉がとても嫌いであった。


【これだけ頑張っているのに、

これ以上どう頑張ればいいの?】

と思ってしまうのだ。