取り敢えず話を合わせておいた方が無難ではないかと思った森下は、
武彦の訴えに対し返事をする。
「大丈夫…
殺したりはしないから安心していいよ!」
安心したのか、
多少表情の緩む武彦であったが、
逆に二人の調査官の表情がこわばり、
明らかに戸惑っていた。
児童相談所からの報告書には、
あらかじめ精神障害の疑い有りとの報告があったが、
これ程までとは思っていなかったのだ。
その後急遽調査が打ち切られ、
今後どの様な調査方法が最適か、
検討される事となった。
翌日井上弁護士は、
田口弁護士と共に再度武彦と接見した。
「こんにちは武彦君!
君はこの前テリー達と戦争していると言ったね!
詳しく話してくれないかな?
まず…テリーって誰?
何処で知り合ったの?」
しかし武彦からは、
俯いたまま何の答えも返ってこなかった。
この時井上は、
どの様な質問をしたら武彦の本質を見抜けるか悩んでいた。
その後もいくつかの質問をした井上だが、
この日の武彦はほとんど口を開いてくれなかった。
そしてこの時井上は確信し、
決心する事となった、
精神鑑定の申請をすることを。



