『流石は我等の殿下ですね。
先程のお言葉によりこちらの士気は上がりました。
やはり、これも殿下のお人柄故の事なのでしょうね──』


「クリスト……
お前はそのような事を言うために──まぁいい、それよりそちらはどうなっている?」


呆れたような表情をしたルイだったが、すぐに真面目な表情へと戻し、ヴォーダンの艦長であるアーゼル少佐へと問う。


『とりあえず、今のところ航行システムに異常はみられないので恐らくですが、大丈夫かと…
ただ、オーディンより急ピッチに仕上げられた為、不安はありますが、そこは部下を信頼してますからね』


「数時間でシステムを調整させたからな…
不安はあると言えど今回、ユーゲントは後方に配置されるから、大丈夫だろう…
とにかく、出航まで僅かだ。
最善を尽してくれよ?」


『勿論ですよ。
殿下とこの国の誇りにかけて私は戦う所存ですから…』


アーゼル教官──少佐は最後に敬礼をしてみせて通信を切った。




そして、レストア皇国軍艦隊は出航の時を迎える。


「エンジン起動します。
メインジェネレーター、出力上昇…
オーディン、発進可能です」


淡々とレーヴェンツ曹長が告げれば、ルイが閉じていた目を開き、一言告げる。


「ユーゲントの初陣だ」


そんなルイにパイパー艦長が頷いて見せ、力強い声で発進の合図を出した。


「オーディン、微速前進せよ。
発進後は、艦隊最後尾に着け」


「了解ッ」


パイパー艦長の指示に答えたのは操舵士のベルガー軍曹だ。


オーディンとヴォーダンが格納されていたドックのゲートが開くと、オーディンとヴォーダンは浮遊した。
そして、基地の管制官に従い、先にドックから発進したのは勿論オーディンである。


基地から発進すると、ブリッジから見えた景色は、夜明け前の薄暗い空の色と無数の友軍の艦艇だった。