あの後、私はシステムの操作の方法等を説明をしてもらい、今は出航する時を待っていた。


「エアハルト、搬入作業は終了したか?」


ドアが開くときのエアー音が聞こえ、中に入ってくるや否や、艦長に確認するのはユーゲントの指揮官であるルイであった。


「はい。後は出航するのを待つのみです」


「そうか…」


艦長席の横に立った彼は、何か思案している様子をした後、再び口を開く。


「伍長、出航予定時刻は?」


ルイに問われたフォルスター伍長は、先程通達のあった出航予定時刻を告げる。


「はい、先程の通達では、一時間後には出航との事でしたので、今からですと20分後という事になります」


「解った。
先程、司令部に入った情報だと帝国軍は国境付近に迫ってるらしい。
我々と敵軍の進軍スピードを解析して会敵予測ポイントを司令本部より流すようだから、後程確認しておくように」


「了解しました」


「あぁ…それから、オーディンとヴォーダンに艦内通信を開いてくれ」


「了解。
……回線回します」


フォルスター伍長は直ぐ様、コンソールパネルを弄り、通信回線を開いた。


「ギュスター・ユーゲントの諸君。
ユーゲント指揮官、レストアーノだ。
此度は、創設されたばかりのこのユーゲントとして戦場に行く事は、多少なりとも皆に不安を与えているだろう。
まだ、人員も揃ってない、進水式すら済ませていないこの二隻の艦なのだが、諸君等が力を合わせ、耀かしい初陣を飾ってもらいたいと願っている。
しかし、それとは別に私は今回の戦闘で誰一人の犠牲の無い事も切に願う……
皆の健闘に期待している──」


ルイは話し終えると、繋いでいた回線を切った。
ルイのこの通信によって、我が隊の士気は少なくとも上がった気がする。
いや、上がった筈だ。
今更かと思ったが、やはりルイは、人の上に立つ人という事を改めて実感した。


「殿下、ヴォーダン艦長アーゼル少佐より通信入ってます」


ぼうっとルイの事を考えていると、再びフォルスター伍長の声が聞こえ、ハッとした。


「繋いでくれ」


ルイの了承を得たフォルスター伍長は通信を開いた。
モニターに映されていたのは、やはり士官学校の教官クリスト・アーゼル、その人だった。