あれから私は、入隊するにあたっての説明等を受け、辺りが暗くなったからとの理由で、ルイが馬のオルフェを引いて私を送ってくれている。


「ルイ、本当に大丈夫?
お城の皆が心配してるんじゃ…」


「大丈夫だよ。
私は子供ではないし、仮にも軍属となった身だ。
それに、姫をお護りするのは王子の役目…だろう?」


片目を瞑る仕草でそう語るルイが、凄く似合っていて笑ってしまった。


「クスッ…
ルイって本当に王子様だね」


ルイがそれを聞くと悲しそうな顔をして、手綱を離し私の頬に触れてきた。


「君もお姫様だよ。
私だけの可愛い姫だ…」


ルイはそう言うなり、私を優しく抱き締めた。


「ルイ…」


私とルイは見つめ合い、そして、目を閉じ、唇が重なりあった…













重なりあった唇を離すと、ルイは再び私を抱き締めた。
今度はきつく、強く、離れぬようにと──


「この三年、君は一人で頑張ってきたんだね…」


これに私は頭を横に振った。


「いいえ、一人じゃないわ。
私には、ヒューゴもオルフェもいてくれたから…」


「そうか…
ヒューゴって君の父上の側近だったヒューゲルト・ライニッヒ?」


ルイの質問に私は頷いた。


「ええ。
ヒューゲルト・ブラント・ライニッヒ。
それで、彼のミドルネームを今の私とヒューゴのファミリーネームとしたの。
そうだ!
私がルイを連れっていったらきっと驚くわ!」


「そうだね。
それじゃあ、行こうか」


ルイは離したオルフェの手綱を再度握り、私の家がある方角へと歩き出した。